石黒浩教授「アバターと未来社会」講演より考える、教育のこれから
こんにちは。カラフル学舎の加藤です。
6月6日、宮城教育大学で開催された「NEW EDUCATION EXPO 2025(仙台サテライト)」に参加してきました。
当日は朝10時から午後5時過ぎまで、3つのセミナーに参加。会場では、お世話になっている宮城教育大学教職大学院の菅原弘一特任教授にもご挨拶でき、有意義な一日となりました。
その中でも特に心に残ったのが、大阪大学・石黒浩教授による講演「アバターと未来社会」。2025年大阪・関西万博「いのちの未来」パビリオンのプロデューサーも務める石黒先生が語る、アバターと社会のこれから。
その内容は、単なる技術論にとどまらず、教育とは何か、人間とは何かを問い直す時間でもありました。
アバターとは?
石黒先生は冒頭、遠隔操作型のロボットや、AIが自律的に動くキャラクターも、広い意味でアバターと定義されていました。重要なのは、「その場に誰かが“いる”と感じられるかどうか」。つまり、存在感の再現です。
さらに先生は、「人間同士のやりとりも、実はアバター的」だと語ります。私たちは相手の外見、声、振る舞いを通じて、その人を理解しようとする。教育現場における“教師と生徒の関係”も、まさにその延長にあります。
人口減少社会におけるアバターの役割
今、日本は急速な少子高齢化に直面しています。
教育、医療、福祉など、あらゆる領域で人手不足が深刻です。そんな中で、アバターは「労働力の代替」としてではなく、人との関わりを拡張・補完する存在として注目されています。
石黒先生が紹介した事例は非常に具体的で、説得力がありました。
- 離島の保育園で、遠隔地に住む高齢者がロボットを通じて読み聞かせ
- 都市部の店舗で、地方や海外在住の人がアバターで接客対応
- 自閉症の若者がアバターと面接練習し、社会参加への第一歩を踏み出す
いずれも単なる「効率化」ではなく、新しい関係性のかたちを提案するものだと感じました。
カラフル学舎の実践との接点
私たちカラフル学舎でも、ICTや生成AIを活用し、生徒一人ひとりに合わせた学びを提供してきました。
特に、当塾が開発したAI先生「NANDE」は、生成AIによる個別最適化学習の先駆けとなり、2023年には日本e-Learning大賞・経済産業大臣賞を受賞しました。
今回の講演を通じて、NANDEのさらなる展開可能性が明確になりました。
今後は、「教師のアバター」として教室内に常駐し、学習支援を中心とした対話型ツールとしての活用もより広く検討しています。
教育の価値はこれからさらに高まる
石黒先生の言葉の中で、特に心に残ったのが次のような指摘でした。
医学や法学などの知識は、生成AIによって効率的に習得できるようになった。
しかし、人と人との関係性、感情、教育のような「対人間」の領域は、AIでは代替できない。
知識はAIで補えますが、「人間をどう理解し、どう育てるか」という問いは、これからますます人間の役割になります。
人間が人間を深く理解する力こそが、今後の時代に最も求められるスキルになると私自身も感じています。
その意味で、教育学部の価値や偏差値がもっと見直されていいと石黒先生はお話しされていました。
理系から文系へのシフト、という流れは、今後確実に社会の主流になっていくはず、という言葉が印象的でした。
今回は、教育関係者向けイベントということもありリップサービスもあったかとは思いますが。
「いのちの未来」プロジェクトに見る社会の方向性
石黒先生は、2025年大阪・関西万博において「いのちの未来プロジェクト」(https://expo2025future-of-life.com/)のプロデューサーを務めています。
ここでは、アバターやAIが生み出す新しい社会像が提示されています。
その根底にあるのは、「人間とアバターが共生する社会」への展望です。
AIやテクノロジーが人間の代わりになるのではなく、人間と共に生きる存在として、お互いを補完し合う未来社会。その姿は、教育の現場でも確実に求められていくと感じました。